· 

低脳と読む「プロジェクト・ヘイル・メアリー」アンディ・ウィアー著 その1

プロジェクト・ヘイル・メアリーアンディ・ウィアー著を読んだので振り返り感想まとめその1。例のごとくうろ覚え箇所多。

 

宇宙SF小説。宇宙人が出てくるタイプのアレ。地球外生命体との「ファーストコンタクト」モノともいうのかな?

 

宇宙オタクどもが天体観測してたら太陽の熱をごはんにして生きている謎の生命体がたくさん発見されました!このままだと太陽熱が下がりまくって地球が滅ぶ!学校の科学教師ライランド・グレースが世界の科学と技術の粋を集めて作った宇宙船ヘイル・メアリー号で飛ぶ!途中で手を組み合ったクソザコメンタルの宇宙人バディとともに、地球とエリド(宇宙人の故郷)2つの星を救え!旅は道連れ世は情け!これからの時代を生きる愛する教え子たちのために、太陽の輝きを取り戻せ!でもこんな船に強制的に乗せやがったあのクソアマだけは許さねぇ~~!なお話。


【主要な登場人物やら用語やら】

グレース:主人公。普段は学校で子どもたちに科学を教えていた先生なんだけれど下記のストラットに昏睡させられ半ば強制的にヘイル・メアリー号とともに宇宙へ打ち上げられたのでしゃーなしに地球を救う気苦労BOY。科学分野なら多方向に精通している。

 

ストラット:ヒロイン…?ヘイル・メアリー計画の全権、つまりは地球の存亡を一任されているバリキャリウーマン。40代半ばくらい。今日もあっちで権力行使、明日はこっちで権力行使。地球を救うためにグレース博士を無理やり宇宙へ打ち上げた。

 

ロッキー:グレースが出会ってしまった宇宙人(エリディアン)。岩でできた蜘蛛みたいな生き物。正真正銘真ヒロイン。犬くらいのサイズ。

 

アストロファージ太陽の熱をぱくぱく食べて暮らしてる宇宙にはびこる問題児。顕微鏡で見るレベルの小ささの黒い球。エネルギーを貯めて噴射して飛ぶだけの小さい黒い球。というすごくわかりやすいシンプル設計の宇宙生物。

 

ペトロヴァ問題:発見者ペトロヴァ博士の名前にちなむ。アストロファージが大量に集まり太陽から熱を奪っているという問題。また太陽と金星を繋ぐように形成されたアストロファージたちの線をペトロヴァ・ラインと呼称。

 

ヘイル・メアリー号:ペトロヴァ問題の調査・対策のためストラットが世界の科学と技術の粋を集めて作らせた外見も中身もすごくわかりやすいシンプル設計の宇宙船。(最初に図解ページがあるけど子どもの落書きレベルでぱっと見で分かりやすい。マジで)

 

ちなみに「ヘイル・メアリー」はアメフト用語で負けているチームが一か八かの神頼みで放つ1投(成功率は低い。)みたいな意味があるんだって。

地球に帰還させるつもり一切ナシクルーの死亡確定の片道切符。船首にHDDを組み込んだ小型ロケット4基(ジョン、ポール、ジョージ、リンゴ)があるので何か分かったら地球にビートルズを飛ばしてください。クルーの命はごめんなさい号。

 

 

他にも[ヘイル・メアリー]クルー・ヤオ船長(死亡)同じくクルー・イリュヒナ(死亡)とかクルーになるはずだったデュボア(死亡)とかペトロヴァ問題を巡る重要な作戦会議サミットに一人だけ通訳引き連れて最終的に意見を求められて「希望はあると思います」とぼんやりとした事しか言わなかった日本の重鎮博士(一瞬で出番終了)とかいろいろ出てくるけど、主要な人物はグレース、ストラット、ロッキーの3名だけ覚えておけばなんとかなる親切設計

 

SF初心者がはじめて触れても、主要舞台となる宇宙船も問題となるアストロファージも難しく考えずになんとな~くで理解できる偉い本。


【ざっくりと序盤の振り返り】

主人公は記憶を失った状態で目を覚ます。医療ベッドのようなものに寝かされていて体中からチューブが伸びている。天井からロボットアームが近寄ってきて質問をする。「2足す2は?」「よ、よ……お、ぉおほぉ、ぉ……おん」「不正解」「2足す2は?」「よぉ、ぉ……ぉん」「正解」「あなたの名前は?」はて、名前は何だっただろう?

 

主人公はふとした出来事から、過去に体験した出来事や情報を思い出し、それらの内容をヒントとして現在自分が置かれている状況を推測していく。物語の最序盤はこの現在で何かしらの出来事→それに多少の関連性をもった過去の出来事をフラッシュバックする→フラッシュバックの内容からヒントを得、現状に対処していく」という事の繰り返しになるが、この一連の繰り返しが面白い。一部を挙げると以下のような感じ。

 

・今さっき、はしごの高さをフィート単位で目測した。→自分はアメリカ人か、イギリス人≧カナダ人かもしれない。

 

・小さな子供向けのスラングも知っている。→自分には子供がいるのかもしれない。子どもたちが好きだ。

 

・さまざまな精密機器や実験機材が部屋に並んでいるが、使い方を全て理解している→自分は科学者に違いない!

 

重力がおかしい。→本当におかしい。宇宙に居ることは理解したが、それでもどこか掛かる重力がおかしい

 

そうこうしていくうちに、ついに自分の名前、そして置かれている状況の認識に成功する。

 

・「ぼく」の名前はライランド・グレース

アメリカ人男性。学校で子どもたちに科学を教える教師。

・「細く赤い線」=[ペトロヴァ問題]の調査と対策のために、宇宙船[ヘイル・メアリー]に乗って宇宙に打ち上げられた。

・[ヘイル・メアリー]の他のクルーは全員死亡。「ぼく」だけが昏睡状態から目が覚め、生き残っている。

 

そして、

・別の太陽系に居る事。

 

ここが宇宙SFnoob的には困惑するポイントだったけれど、要はこうだ。

 

「我らが太陽はアストロファージに感染しているが、[タウ・セチ]という星は太陽と近い性質を持っているのに感染の兆候が見られない。そこに解決のヒントがありそうだ。[タウ・セチ]を調査すべし。」

 

これが[ヘイル・メアリー]、そしてグレースに与えられた第一ミッションだ。

 

そして遠い[タウ・セチ]へ向かうため[ヘイル・メアリー]の燃料タンクに充填されている燃料。

それは。

 

アストロファージ。

 

[ヘイル・メアリー]は宇宙生物アストロファージを燃料に飛んでいた。

「そうきたか!」と唸る事請け合いのまさかの設定。大量に培養・繁殖させた(実はグレースが以前に培養研究を行った。そして「アストロファージ」の命名者もグレースだ。)アストロファージの生態を利用して、そのエネルギーを噴出する際に発生する力で飛ぶ。SFの楽しさってこういう所なのかも!


宇宙飛行士でも専門家でもないグレースがなぜ宇宙に放り出されているのか?

過去回想と現状考察を繰り返し、グレースの身の上、そして[ヘイル・メアリー]に与えられた帰るあてのない特攻ミッションのさらなる具体的な内容を解き明かしながら、[ヘイル・メアリー]は[タウ・セチ]へと向かう。

 

“ジョン、ポール、ジョージ、リンゴは家に帰るが、ぼくの長く曲がりくねった道(ロング・アンド・ワインディング・ロード)はここで終わる。”

 

“ぼくはここで死ぬことになる。ここで、ひとりで死んでいくのだ。”

 

そして。

SF初心者にもたいへん分かりやすい親切設計の序盤で読者を引きずり込んだ挙げ句。

上巻の序盤が終わりに差し掛かる第6章からさらに面白さにインフレがかかる。

 

“正気の人間なら誰もあんな形の宇宙船はつくらない。とにかく地球の住人なら誰も。”

 

“「うっそだろう!」”

 

グレースは、地球とは別の惑星から来たとしか思えない宇宙船との邂逅を果たす。

 


[タウ・セチ]の傍らで邂逅した宇宙船と地道にコミュニケーションを取り合って意思疎通に務める。

グレースは宇宙船を[ブリップA]命名

 

この様子がグレースの科学知識を総動員した知的なパートでありつつ、決して互いに敵対する意思がない(宇宙船を出すレベルの文明同士、互いに異星生物とのファーストコンタクトならある意味当然か)事も伝わってきてどこかコミカルで微笑ましい。こんな感じ。

 

・[ヘイル・メアリー]が少し動く→[ブリップA]が完璧に速度や角度を併せて同じ動きをして見せる

→挨拶かも……あっちの操縦技術ヤベエ……。

 

・なんかゆ~~~~っくり投げてよこしてきた。(軌道まで完璧。)→地球にはない謎の金属で出来た[ヘイル・メアリー]の模型だ。

あっちの製造技術ヤベエ……。なにこれすごい精巧に作ってある……。なにこの臭い金属……??めっっっちゃ硬い……

 

※ここで賢いなって思ったのが、グレースの側も、人間が反応可能な速度を[ブリップA]に知らせるためにある程度速度をつけて投げ返して言葉を交わさず情報を交換していたところ。さっきのゆっくり宇宙遠投は流石に遅すぎてキャッチまで数十分待った。

 

そうこうして互いにいくらかの情報伝達を試みて、[ブリップA]も[ヘイル・メアリー]と同様、アストロファージに恒星の熱を奪われている問題の調査と解決に来たという事を相互に認識する。そして。

 

・今度は[ヘイル・メアリー]と[ブリップA]の模型が飛んできた。

 

 

模型同士が、パイプのようなもので互いに接着されている。

 

 

 

 

パイプの接着箇所は、[ヘイル・メアリー]のエアロックその場所だ。

 

 

 

 

→かれらは、会いたいと言っている。

 

 

 


次回、宇宙人とご対面。前半といいつつ全体進捗でいうたら25%くらいなのねん。。続く