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低脳と読むV.ウルフ「オーランドー」第一章①

最愛のあなたへ。

 

読みたいけど読みにくい。そんなウルフ作品を楽しもうと、グッと来た文章や表現を書き留めつつ、物語の進行チャートみたいなものを作ろうとする試み。

主観や推測だらけで勘違いもきっともりもり。ウルフはWolfじゃなくてWoolfなのがすき。

V(ヴァッソニャン).


[オーランドー](ちくま文庫 杉山洋子訳)

冒頭から宮殿復帰まで。


~おもな登場人物~

 

オーランドー:自然を愛し詩を愛する美童。物心ついたころにはそれなりのヤリチンと化してた主人公。

 

女王:戦禍を生き抜いた英国老女王エリザベス1世。純粋無垢なオーランドー少年を気に入り召し抱えるも割とヤリチンだったのでショックで死にかける。ジョジョ1部でタルカスとブラフォードのお話に出てきた悪い方の女王。


~チャート~

■チャート1:文武両道美少年・おれはオーランドー16歳

■チャート2:謁見にいこう!女王の威光にひれ伏しカウンター

■チャート3:女王とは遊びだったのね!なろう系ヤリチンの行きあたりばったりラブ


■チャート1:文武両道美少年・おれはオーランドー16歳

 

垂木にぶら下げてあるムーア人の首に向って剣をふるっているところであった。(p13)

・物語開始1ページ目、主人公オーランドー少年の堂々たる登場シーンです。なにやら高貴ないでたちでオトンが討ち取ってきた異教徒の首をオモチャにひとり剣戟を繰り広げていました。

 

オーランドーの祖先は代々、不凋花咲く野や岩だらけの原野、名も知らぬ川に洗われる曠野を駆けめぐり、数知れぬ敵のさまざまの毛色の首を打ち落し、持ち帰っては垂木に吊るしておいたのであった。ぼくだってやるぞ、とオーランドーは心に誓った。(p13)

・ヤベー血みどろ貴族のオーランドーの血族。オトンのごとくやるぞやるぞ(ウォレンスミス)。本当はオトンに戦いに連れて行ってもらって馬を駆っては三國無双ムーブしたいのだけど、若さのしばりで許されないから屋根裏部屋で異教徒の首をエイヤエイヤといじめぬくのでした。

 

オーランドーは今、紋章の黄豹の身体の真ん中に立っていた。窓を押し開けようと窓枠に手をかけるや、その手は蝶さながらに赤、青、黄に染まる。(p14)

・屋根裏部屋もステンドグラスで豪華仕様なお屋敷。そもそも屋根裏部屋が体育館くらい広い。陽光とともにステンドグラスの紋様を身に纏うオーランドーくんの美的描写がお素敵なシーン。

 

櫃に蹴つまずくようなオーランドーは当然、人気のない場所、広大なる眺め、そして永久不変の孤独を愛したのである。(p17)

・剣を振り詩を書き自然を愛した文武両道オーランドー少年、多才ゆえに個人主義の性質があり、周囲のことがらとなるといささかぶきっちょでありました。

 

 

■チャート2:謁見にいこう!女王の威光にひれ伏しカウンター

 

この人は詩人なのか?詩を書いているのだろうか。「何もかも、世界中のことをみんな教えて下さい」と頼みたかった(p20)

・突如オーランドーの屋敷に来賓された女王陛下に領地中がざわめく中、素早く着替えを済ませて裏道を急ぐ彼の前にペンを持って物思いに耽る男が現れます。詩人でしょうか(希望的観測)

 

男がペンをあちこちひねくりまわし、宙を睨んだり考えこんだりしたあげく、さらさらさらと六行ばかり書き流すのをじいっと見ていたのである。(p20)

・詩を愛し、詩に絶大な無限力を期待し、そして詩人を敬うオーランドー。なにやらを書きしたためる男の様子を観察していました。しかしオーランドーの凝視に気づいた男は恥ずかしさに飛び上がって逃げてしまいました。

・実は彼こそ未来のオーランドー?!…みたいな展開もちゃっかりアリそうかと言われればアリそうなのがこの物語の怖いところ。

 

というか、手しか見えなかったのだ。(p21)

・実はたいへんなシャイボーイであったオーランドー。女王陛下との謁見で頭を垂れるも、差し出された女王の手に見惚れるのが精一杯でした。女王の威光にひれ伏せ!

 

同じく女王御自身からすれば頭しかご覧にならなかったはずだ。(p21)

・それはそう

・しかし感性の獣オーランドーくん、女王の手を見るだけで女王の偉大さ、歴史、人となりを感じ取る事に成功します。

・そしてそれは女王陛下も同じこと。オーランドーの頭を眺めるだけでその魅力にぞっこんでございました。この美童にたまらんのでございました。美童の威光にひれ伏せ!

 

いつも耳の中で砲声が響いている。煌く毒の雫、長い小剣がいつも目に浮かぶ。食事中も耳をそばだてている、と、イギリス海峡で砲声が轟く、怖いこと(p22)

・老女王の独白。常に身を引き締め戦禍に生きてきた苦労人でございます。さような悪辣の歴史に身を置いていたため、オーランドーのような純真な存在には心惹かれるものがございました。

 

オーランドーは一晩中何も知らずに眠っていた。女王にキスされたのも知らなかった。(p22)

・謁見のあと、オーランドーがぐっすりと眠っている間に女王とお家の間にたいへんなコトがございました。オトンがこのでっかい屋敷を正式に贈られ、寝ている間に女王にチッスされ、その夜から2年後、オーランドー少年は王宮に直々に招集されたのでした。

・キスした瞬間悶絶身じろぎする女王が萌えポインツ。とはいえ女王とオーランドーくんは実は血が繋がっているので、そもそもお家の付き合いでわりと仲良しだったりします。

 

 

■チャート3:女王とは遊びだったのね!なろう系ヤリチンの行きあたりばったりラブ

 

ダマスク薔薇さながらぽっと頬を火照らせて、老女王の凝視に耐えたのであった。(p23)

・2年の成長を遂げたオーランドーを女王Eyeでゼロ距離観察するショタ喰いババア様でございました。

 

その場で、ご自分の指(関節が少々むくんではいたが)から指環を抜きとるや、彼の指にはめてやって、大蔵卿並びに主計卿に任命された。(p23)

・ンー合格♥てなカンジにその場で独断にてオーランドーくんに重役を任命するババアなのでございました。

・以後、彼は女王の寵愛をほしいままにしたのであった。(現文ママ)。寵愛の抱かれ鎧。

 

いざポーランド戦争に赴かんとして出帆間際に呼び戻された。(p24)

・手中に収めたオーランドーへの可愛がりが過ぎる過保護老女王サマ。

・あの華奢な身体が引き裂かれ、巻毛の頭が塵にまみれるなど思うだに耐えがたい(原文ママ)。

 

彼は少年の頃の記憶を辿って、こりゃまるで母上が毛皮をしまっておられたうちの古い櫃みたいな匂だな、と思ったことであった。(p24)

・老境に堪え病床に横たわる女王に全力で抱きしめられながら。

・一ヶ月着替えてない。

 

まさか――女の子に――あの厚かましい女は一体誰だ?――キスしているのが見えたのだ。黄金の柄の剣を引っ掴むなり、彼女は烈しく鏡を突いた。(p25)

・女王怒りの突き攻撃。刺客防止の鏡に映る雌猫を見事一撃で粉砕したのでございました。

・オーランドーが女に誑かされた事にショック賜われる女王。死にそう(マジで)。

 

オーランドーの嗜好範囲は広くて、花壇の花にとどまらず、野の花、雑草にも常に心惹かれたのであったから。(p26)

・さて当時はエリザベス朝、今の倫理観とはすこし異なるものですので、女遊びをしたとして、一概にオーランドーを責め立てる事は正しいのでしょうか。

・それはそれとしてオーランドーくん、随分な雑食ナンパマンでした。なおかつ全員食って全員の詩を書くレビュワーマンです。女王の前でキスした女も結局どこの誰とも知れませぬ。

 

オーランドーのこのおかしな性癖のいわれを包み隠すことなく記しておきたいのだが、つまりそれは彼の祖母というのが野良着を着て乳しぼりをしていた、という事実なのだ。(p26)

・高貴な血を引きながら褐色の土に囲まれた幼少期を過ごしたオーランドーくん。田舎の美童、実は女王の血を引く高貴な生まれで…?!みたいなあれでした。

・なので下賤なものや低俗なものの方が実は性に合ってたオーランドーくん。身分の低い人や出世できない人の方を好みました。宮廷の貴婦人より酒場の娘!良い趣味です。

 

で、十字を切った。悔悛を誓った。今日なおシーン・ロードに並ぶ養老院はその瞬間の恐怖の具体的成果である。(p28)

・オーランドーのヤリチンエピソード回想。ある日労働船に忍び込み、船員スーキーさんと船倉でしっぽり愛し合ってから眠っていた所を船のオーナーに発見されてしまいます。己のさまざまな悪行に良心を痛めていたオーナーはスーキーのはだけた真っ白な胸を見て、溺死した水夫の亡霊が出てきたものだと思い咄嗟に出たのが上記の行動。

・こういう人のおかげで養老院は儲かってて老婆たちは安静に暮らせるのでした。(知らんがな)

・ちなみにスーキーの白い胸、オーランドーは感銘を受け「永遠の雪」と詩を残しました。(知らんがな)

 

連中のことは後々まで楽しい思い出に留めるとして、ビア・ガーデンや遊戯場に見切りをつけ、灰色のマントを衣装箪笥に吊るしら襟元に輝く勲章ら膝にはガーターをきらめかせ絵再びジェイムズ王の宮廷に姿を見せた。(p29)

・毎日のように下級層と爛れた恋をしていたオーランドーくんでしたが、それはそれとして次第にウンザリしてきます。罪悪や貧困って興味深くはあれど、別に楽しくはないのですから。つまるところ連日やってるうちに飽きた。

・再び綺羅びやかな上層へ帰還した美男オーランドー、全身全霊の拍手喝采をもって迎えられたのでした。


初登場シーンでバッソをふるっていたいなおれもな、つづく。